はじめに
NPO法人子育てサポートもみの木
もみの木保育園 園長 森田幸子
もみの木保育園は、1988年(昭和63年)11月、埼玉県深谷市のさくら・さくらんぼ保育園の保育(創設者:斎藤公子氏)に学び「自然の中で存分に遊んで育つ子ども時代を満喫できる保育園を」との趣旨のもと自然豊かな足守の古い農家の空き家を借りて開園しました。
生後2ヶ月から就学までの乳幼児と、1年生から6年生までの小学生(障がい児も含めて)の子どもたちが、仲間と共にたっぷり遊べる自然豊かな約1000坪(現在は1500坪)の空間を確保し、新鮮な旬の食材を使った手作りの食事を柱に、健康な身体と心を育てる子育てを大切にしてきました。
もみの木保育園は、父母と職員が力を合わせて「手塩にかけて子どもを育てる」ことを大事にしています。それは、「子どもが育つ」には欠かせない、昔からの大切にされてきたことです。私たちは、「子どもが健康に育つ」うえで、食べることと寝ること(健康な生活習慣を身につけること)、そして遊び(広い空間で仲間と共に思いっきり遊ぶ体験)をどう保障してあげられるかをいつも考えてきました。こうした保育園づくりの陰には、知恵を出し合い力を合わせる大勢の大人と、子育ての学び合い、経済的努力の積み重ねもあります。しかしながら私たち大人は何よりも、「子どもが育つ姿」に労をねぎらわれるばかりでなく、逆に励まされて、この「本来当たり前」の子育てを続けて来ることが出来ました。子どもたちが豊かな子ども時代を過ごすためには大人たちの大きな支えが必要です。
人間は、かつて長い間こうした当たり前の子育てを脈々と営み続けてきました。しかし、私たち日本の社会は高度成長期よりめざましく変化して、このような当たり前が当たり前でなくなってしまいました。人々の生活水準が上がり物が溢れ、価値観の多様化が言われる中で、「便利・簡単・楽・楽しければ・お金さえ出せば」と、オシメは紙、食事は手軽、遊びはテレビにゲーム、夜遅くまでの塾通いやお稽古など、便利で楽な子育てに流されてしまいがちです。そして、子ども達を取り巻く事件も急増しています。「子どものうつ病・いじめ・自殺・不登校・引きこもり・子どもをめぐる殺傷事件」等々のニュースに事欠かなくなってしまった昨今です。こういう事がなぜ起きるのか。どうして起きてしまうのか。このような時代だからこそ、本当に必要な「今の時代の手塩のかけ方」を私たち大人は真剣に考えていかなければならないと思っています。
子育ては、次の社会を引き受けていく人たちを育てる仕事です。この冊子は、もみの木保育園の子どもたちの普段の生活・遊ぶ姿を紹介しています。子どもたちの育つ環境や姿から、「今、子育てで何を大事にするのか」「豊かな子ども時代とは何か」を考える参考にしていただければ幸いです。原発、放射能問題など困難な課題が山積した時代に、子どもの健やかな育ちと真の豊かさを願って力を合わせ支える大人の輪が広がっていくことを願っています。